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貸す前の傷は直すべきか。あえて直さず記録に残すという選択

貸す前の傷は直すべきか。あえて直さず記録に残すという選択

実家や空き家を人に貸すと決めたとき、よく出る質問があります。「壁の傷や床のへこみは、全部直してから貸した方がいいのでしょうか」。

私たちが現場で取っている方針は、少し違います。暮らしに支障のあるものは直します。一方で、見た目だけの小さな傷は、あえて直さずに写真と書面に残して貸すことがあります。この記事では、そう判断する理由と、記録の取り方を書きます。

退去のときに揉めやすいのは「いつ付いた傷か」

貸した家の揉めごとで多いのは、退去のときです。部屋に傷があったとして、それが入居前からあったのか、住んでいる間に付いたのかで、話し合いの前提が変わります。

入居前に全部直しておけば問題ない、と思われるかもしれません。ただ、小さな傷やへこみは暮らしていれば必ず増えます。直した部屋でも、退去のときに「この傷はいつからか」という話は出てきます。

困るのは、そのときにどちらも証明できない状態です。貸す側は「入居前にはなかった」と思い、借りる側は「最初からあった」と思っている。数年たてば、双方の記憶はあいまいになり、担当者が変わっていることもあります。言い分がぶつかっても、決め手がありません。

入居前の状態を残した記録があれば、少なくとも「最初からあったかどうか」は写真で確かめられます。話し合いの土台ができるということです。

直すものと、残してよいもの

とはいえ、何でも残せばよいわけではありません。私たちは次のように分けて考えています。

入居前に直す方向で考えるもの:雨漏りや設備の故障、けがの恐れがある箇所、虫が入り込む網戸の穴など、暮らしに支障が出るもの
記録に残して貸すことを考えるもの:壁の小さな傷、床のへこみ、建具の汚れなど、見た目だけで使うのに困らないもの

後者まで全部直すと、費用と日数がかかります。入居の予定が決まっている場合は、工事のために入居日を遅らせることにもなります。見た目だけの傷であれば、直さずに記録で済ませる方が、貸す側・借りる側の双方にとって負担が小さい場合があります。

入居前の確認で、実際にしていること

先日も、ある物件で入居前に借りる側の方と一緒に家の中を回りました。そのときの進め方は次のとおりです。

借りる側の方に立ち会ってもらう。貸す側だけで撮った写真より、双方がその場で見て確かめた記録の方が、後で話がこじれにくくなります
部屋の順番を決めて、漏れなく回る。玄関、各部屋、脱衣所、浴室、トイレ、台所、階段、押入れ、外まわりまで、順に見ていきます
部屋ごとの確認表に書き込む。傷、汚れ、へこみ、破れなどを、場所と一緒に書き留めます
写真は「部屋全体」と「傷の寄り」を組にする。寄りの写真だけでは、後で見たときにどこの傷か分からなくなるためです
記録の控えを双方で持つ。片方だけが持っている記録は、相手から見ると確かめようがありません

同じ場で、設備の使い方や、借りる側が後から取り付けたい設備の相談もまとめて済ませました。家の中を一緒に回る時間は、傷の記録だけでなく、入居前に話しておくべきことを洗い出す場にもなります。

遠方にお住まいの所有者様ほど、記録が役に立ちます

遠方にお住まいだと、退去のときに現地へ立ち会えないことがあります。その場合、判断の材料は写真と書面しかありません。

入居前の記録があれば、退去のときの写真と並べて見比べることができます。遠くからでも、何が変わったのかを確かめられるということです。

記録があっても、すべては防げません

最後に、不都合な点も書いておきます。

記録で確かめられるのは「その傷が入居前からあったかどうか」までです。住んでいる間に付いた傷や傷みを、誰がどこまで負担するかは、別の話として残ります。また、撮り漏れた箇所は記録に頼れません。記録は揉めごとを減らすための道具であり、それだけで揉めごとがなくなるわけではない、という前提で使うのがよいと考えています。

よくあるご質問

貸す前に、傷は全部直した方がよいのでしょうか

暮らしに支障があるもの(設備の故障、雨漏り、けがの恐れがある箇所など)は、入居前に直す方向で考えます。見た目だけの小さな傷は、直さずに写真と書面で記録に残して貸す、という選択肢もあります。費用と日数を抑えやすく、退去のときに「いつからあった傷か」を確かめる材料にもなります。

入居前の写真は、貸す側だけで撮っておけば足りますか

貸す側だけで撮った写真でも、ないよりは役に立ちます。ただ、借りる側の方に立ち会ってもらい、その場で一緒に確かめた記録の方が、後で「そんな傷は見ていない」という話になりにくくなります。控えは双方で持っておくことをおすすめします。

写真はどのように撮ればよいですか

部屋全体の写真と、傷に寄った写真を組にして撮るのがよいと考えています。寄りの写真だけだと、後から見たときにどの部屋のどこの傷か分からなくなるためです。部屋ごとの確認表に場所を書き添えておくと、さらに見比べやすくなります。

入居前の記録があれば、退去のときに揉めることはなくなりますか

なくなるとは言えません。記録で確かめられるのは、その傷が入居前からあったかどうかまでです。住んでいる間に付いた傷を誰がどこまで負担するかは、別に話し合うことになります。


つなぐ不動産では、遠方にお住まいの所有者様に代わって、入居前の立ち会いや物件の記録、貸した後の管理をお引き受けしています。直した方がよい箇所と、残してよい箇所の見立ても、良い点だけでなく正直にお伝えします。

「実家を貸したいが、どこまで直せばよいか分からない」といったご相談は、公式LINEから、今の状況や希望の条件をそのままお送りください。文章でも、家の中の写真でも構いません。内容を拝見したうえで、こちらからお返事いたします。